平成の凡慮 ー原発輸出は富国無徳か?-

 連休の最後の日に毎日新聞に「原発輸出は無徳」という記事が出た。
内容は「カウントダウンメルトダウン」という書籍の読後感を交え「昭和16年
夏の敗戦」という書籍を引き、まとまりのあるコラムとなっている。
 猪瀬直樹氏が東工大での特別講義をまとめた後者の書籍は先の大戦を
振り返る優れた教材である。当方前者の書籍の内容は知らないが、大宅壮一ノンフィクション
賞に決まったそうである。
 福島原発事故が暴いたものは「巨大システムの中で細分化された専門家の無力」である
という。あの事故が教えたのは原発は緊急冷却停止しても、巨大システムから発生し続ける
発熱を冷却し続け常温 50℃近くまで戻さなければならない、これが原発の安全運転では
基本中の基本であることを世界に示したのである。
原発の停止は運転中引き上げている中性子吸収棒を元に戻すことであるが、元に戻しても
すぐには発熱は止まらない。当方、原発技術者で無いので何時間冷却し続けるかの
詳細は知らないが、数日単位であろうか。
 福島の事故は非常用電源が働かず、もちろん通常電源も使えず冷却水を循環
できなかったのである。だから巨大なシステムの中で燃料棒の冷却が進まず
1000℃以上に過熱しメルトダウンにつながってしまったのである。
 原子力発電機は世界の英知を集めて設計されたものであり、5重の安全装備が施されて
いることはこれまで何度も言われてきたことであり、絶対に事故が起こらないと
いわれてきた所以である。しかし事故は起きた。
 福島の事故は大規模地震や津波の結果であり
国や民間の事故検証でもいまだに地震や津波の影響の詳細は明らかにされていない。
「巨大なシステムの中で細分化された専門家の無力」などと簡単に言ってほしくないのだ。
あの事故の素因は原子力村という専門家集団、東電という企業の特殊性、装置産業の電力事業、監督する側と
監督される側との癒着の中にこそ求められるのだろうから。
 「原発輸出は富国無徳」は一般受けはするだろうが言い過ぎである。

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